「助け合い」が生み出す豊かな社会
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「助け合い」が生み出す豊かな社会

全国共済農業協同組合連合会(JA共済連) 代表理事理事長 柳井二三夫 日本介助犬協会 専務理事 髙栁友子

活動の大部分が企業・団体・個人からの寄付によって成り立っている日本介助犬協会では、15年以上にわたって全国共済農業協同組合連合会(以下、JA共済連)からの支援を受けてきました。「相互扶助」を理念として、豊かな社会をつくりあげていく目標を掲げているJA共済連では、なぜ日本介助犬協会に対して長年にわたって支援を行ってきたのでしょうか? そして、支援を受けながら、日本介助犬協会ではどのような活動をしてきたのでしょうか? JA共済連・柳井二三夫理事長と、日本介助犬協会・髙栁友子専務理事との対談から「支援」を通じて介助犬のあり方を考えていきましょう。

介助犬黎明期から支えたJA共済連

介助犬黎明期から支えたJA共済

ーJA共済連から日本介助犬協会に対する支援は、いつごろから始まったのでしょうか?

髙栁:JA共済連との関係は、「身体障害者補助犬法」が施行される以前の90年代末に遡ります。当時、介助犬の法制化が議論されはじめ、厚生科学研究費を取得して介助犬の国内外の状況をリサーチしていたんです。その報告会場がたまたまJA共済ビルでした。この報告会で、交通事故被がい者が介助犬ユーザーになっていることを知ったJA共済連の地域貢献活動担当者が「JA共済連で応援するのに相応しい」と目を留めてくれたのが交流のきっかけです。

ー当初は偶然の出会いだったのですね。

髙栁:JA共済ビルで報告会をして、本当によかったです(笑)。

介助犬黎明期から支えたJA共済

柳井理事長:JA共済連では2003年(平成15年)から日本介助犬協会に関わらせていただいています。私どもが実施するのは共済事業(不慮の事故などの際に組合員やその家族に生じる経済的な損失を補い、生活の安定をはかる保障事業)であり、事業理念としているのが「相互扶助」です。そして、共済事業を通じて、豊かな地域社会や豊かな暮らしを提供していくことをミッションとしています。そんな目標を達成していくため、共済事業以外にもさまざまな活動を展開しているのです。特に、交通事故に関しては積極的に取り組んでおり、日本介助犬協会への支援の他に、リハビリテーションセンターの設置や様々な交通安全啓発活動などを実施しています。

介助犬黎明期から支えたJA共済

ー日本介助犬協会では、実際に支援を受けられていかがでしたか?

髙栁:介助犬の育成には1頭あたり240〜300万円ものお金がかかってしまうため、経済的な支援はとてもありがたく感じています。しかし、それと同じくらい大切なのが、普及活動への支援です。JA共済連から支援を受けた当時は、介助犬に対する社会の認知はほとんどありませんでした。そこで、介助犬という存在を広めるために、全国各地で行われるJA共済連のイベントに参加させていただき、デモンストレーションをし続けてきたのです。

柳井理事長:「JA共済はたらくワンワンランド」では、介助犬のレクチャーやJA共済連で作成した絵本『ハナちゃんの帽子』や『世界でいちばん幸せな犬』の読み聞かせをしています。その他に、各JAが主催する交通安全啓発イベント、毎年各地で開催される「JAまつり」などでも、参加者の方々に介助犬のデモンストレーションをしています。そういった機会を通じて、介助犬が社会に浸透していくお手伝いができればと考えているのです。

髙栁:年間20県ほどにお邪魔し、イベントの実施回数は40回以上を数えます。まだ全国制覇は達成できていませんが、リピートをしてくれる地域も多いんですよ。

介助犬は「社会を介助」する

介助犬は「社会を介助」する

ー介助犬普及の裏には、JA共済連による啓発活動の支援があったのですね。

髙栁:この啓発活動によって、単に介助犬という「お利口なわんちゃんが活躍している」ということだけではなく、障がい者が生活の中でどのような困難を抱えているか、そして、どのような手助けが必要なのかを理解してもらう機会となるのです。「障がいを理解しよう」という堅苦しいお題目だけでは、多くの人々の関心を集められない場合もありますよね。介助犬のデモンストレーションを通じて、気軽な形で障がい者という存在が理解されていく。特に、子どもたちに知ってもらうことによって、次の世代には、障がい者に対してもっと理解のある社会に変えていくことができます。

柳井理事長:社会ではまだ、障がい者の居場所が少なく、そのケアも十分ではないですよね。実は、私の母は足が曲がらない障がいを抱えていたんです。私自身は、子供の頃から母と過ごす際には、自然とその足をケアしながら行動をしてきました。”知識”だけではなく、誰もがそんな”感覚”で行動ができる社会になれば、あらゆる人が住みやすい社会になっていくのではないでしょうか。

介助犬は「社会を介助」する

髙栁:日本人には、障がい者を目の前にしても「何をしてあげればいいのか……」と考え過ぎてしまい、結果的に動けなくなりがちな人が多いみたいです。その点、犬に対しては、「すごいね!」と声をかけやすいし、コミュニケーションが生まれやすい。そこから「ちょっと手伝って下さい」と言える関係が芽生えてくるのです。

柳井理事長:間に介助犬が介在することで、障がい者と健常者とのコミュニケーションが育まれるのですね。

髙栁:アメリカの論文では、介助犬は「社会的潤滑油としての効果がある」と語られています。ある日突然、交通事故などによって車椅子ユーザーになると、気持ちが落ち込むだけでなく、移動の困難さに直面し、多くの人々から「かわいそうに……」という言葉を浴びます。そんな経験が、障がい者から外出をするモチベーションを奪ってしまうのです。けれども、介助犬と共に行動すれば、多くの人々が笑顔を向けてくれ、ポジティブな言葉を投げかけてくれる。障がい者にとっても、介助犬とともに生きることで、見えてくる世界がガラリと変わるのです。

介助犬は「社会を介助」する

柳井理事長:その意味では、介助犬は、ユーザーの生活介助だけでなく、社会との介助をしているのですね。

髙栁:まさに、そのとおりだと思います。ある介助犬ユーザーは、以前は「近くのコンビニに行きたい」という目標を持って、介助犬と暮らし始めました。介助犬と生活してからはもっと気持ちがポジティブになり、「新幹線に乗って旅行に行く」「運転免許を取得したい」と、介助犬に勇気を与えられていきました。そしてついには、自動車の訓練ができるリハビリ施設に入所して運転免許を取得できるまでになったのです。

写真・豊島望 文・萩原雄太 編集・MULTiPLE Inc.
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